1.布地について
ドッグウェアはワンちゃんが動きやすいように、「ニット生地」を使用することが多いです。「ニット」と聞くとセーターのようなウール製品をイメージしがちですが、綿やポリエステルでも「糸を編んで生地にしたもの」はニット生地です。
これに対して、糸を織って布にしたものを「布帛(ふはく)」といい、それぞれ次のような特徴があります。
【ニット生地の特徴】
- 伸縮性・通気性が高い
- 動きや体にフィットし、リラックス感がある
- シワになりにくい
- 洗濯などによって型崩れしやすい
【布帛(ふはく)の特徴】
- 伸縮性・通気性が低い
- きちんと感がある
- シワになりやすい
- 洗濯などによって型崩れしにくい
ひとくちに「ニット」と言ってもたくさんの種類があります。ここでは、ドッグウェアで使用する一般的な生地をご紹介します。
天竺ニット
メリヤス編み(平編み)されており、表と裏で編み地の見え方が違います。編み目が「V」のような形に見えるほうが表です。薄くて軽いため、Tシャツ・タンクトップ・キャミソールなどに使います。ニットの中では伸縮性が低いため、初めてでも扱いやすい生地です。ただし、布端が丸まる「カーリング(耳まくれ)」という現象が起こりやすい特徴があります。
フライスニット
ゴム編みされており、表と裏が同じような見た目になっています。肌触りがやわらかく、横方向によく伸びる生地です。フィットするデザインのTシャツ・タンクトップ・キャミソールに使います。伸縮性が高いため、首まわりや袖口のリブにも使用できます。耳まくれせず扱いやすい生地ですが、編み目が粗いため、ミシンで縫うときに生地が針穴に落ちることがあります。そんなときは生地の厚さより1段階細めの糸を使うか、押さえの圧を弱めにすると縫いやすくなります。
スムースニット
フライスニットと同じ編み方で、目が詰まっているものをスムースと呼びます。サラッとした手触りで、光沢があるのが特徴です。フライス同様に伸縮性が高く、目が詰まっている分、保温性に優れています。
デニムニット
表がデニムのように見えるニットの総称。天竺・スムース・裏毛などがあり、カジュアルなアイテムに最適です。デニムニット天竺は薄手のTシャツ・タンクトップ・キャミソールなどに、デニムニット裏毛は厚手のトレーナーやパーカーなどに使います。
裏毛ニット
一般に「スウェット生地」「トレーナー生地」と呼ばれる生地で、裏はタオルのようなループで構成されています。ループが小さいものを「ミニ裏毛」と呼び、やや薄手なので春夏用のアイテムにも使用できます。耳まくれしやすいのと、端がほつれやすく裁断時に糸くずが出やすいのが難点です。
ダンボールニット
段ボールのように2層構造になっており、保温性が高いという特徴があります。伸縮性は低く、厚みがあり、耳まくれもしないため、ニットソーイングビギナーでも扱いやすい生地です。トレーナーやパーカーに最適です。
スポーツニット
いわゆる「ジャージ」に使われます。通気性が良く、サラッとした手触りが特徴です。耳まくれせず、厚みがあります。扱いやすい生地で、トレーナーやパーカーにおすすめです。
接結ニット
2枚のニット地を重ねて1枚にしています。「接結ガーゼ天竺」はダブルガーゼのニット版で、フワフワとした手触りが楽しめます。
スパンテレコ
一般に「リブ」と呼ばれる生地です。「スパン」はスパンデックスというゴム糸のこと。「テレコ」は表面に凸凹ができる編み方で、スパンテレコはテレコに伸縮性を上げるためのスパンが入っています。薄手から厚手まであり、薄手のものはTシャツなどにも使えます。
スパンフライス
スパン(伸縮性の高いゴム糸)が編み込まれたフライスです。よく伸びるため、フィットするデザインのTシャツをはじめ、首・腕・裾まわりのリブとしても使えます。
パイルニット
一般に「タオル地」と呼ばれる生地のニット版です。吸水性が良く、スポーティーなパーカーやトレーナーなどに適しています。表面が裏毛と同じループになっているため、毛足が長いと引っかかることがあります。毛足の短いミニパイルは春夏に、普通の毛足のものは秋冬のアイテムにおすすめです。
ベロア
表が起毛になっており、毛の流れに上下があります。ワンピースやジャケット、ボトムスなどに使われますが、“てろん”とした柔らかい生地のため、初心者には扱いにくい生地です。
生地は基本的に、見た目がきれいなほうが「表」と考えて差し支えありません。
表を外側にして使わなければならないという決まりもないので、好みに合わせて、裏を外側にしても良いでしょう。
表裏が気になる方は、以下のポイントに注意して見分けます。
表裏を見分けるポイント
- 色や柄の鮮明さ(柄や色が濃く、くっきり見えるほうが表)
- ツヤや光沢(ツヤや光沢があり、なめらかなほうが表)
- 綱目(テレコのように凹凸のある生地では、凹凸がきれいに見えるほうが表)
- 布端が丸まる方向(布端が丸まってくるほうが表)
また、柄や毛並み・光沢のある生地では、上下を確認する必要があります。
柄のある生地
柄を見て、好きなほうを上にします。
毛並み・光沢のある生地
生地をハンガーなどにかけ、少し離れたところから生地全体を見ます。次に生地の上下を入れ替えてハンガーにかけ、もう一度全体を見ます。 見比べたときに生地が光って白っぽく見えたほうが、正しい上下の方向です。試しに生地の下を上にしてかけると、生地が少し濃く見えるはずです。